虹になったブリッチャ

2010.08.04

清らかなせせらぎ

ゆったりのびた木々

緑の間から差し込むひかりはとても柔らかで

その谷は神秘にみちている

そこで暮らすブリッチャは 不思議な力をもっていて

けがをした動物や昆虫

嵐や雪の重みでいたんだ 木や草の傷ついたところを

治してしまう力があった

みんなは 気持ちのやさしい

ブリッチャといっしょにいるだけで

楽しく 幸せな気持ちになれた

今日もブリッチャの歌う そよ風の歌にあわせて

森中の仲間がサワサワと踊っていた

ある日ブリッチャは

山のてっぺんの 大好きな ひのきのてっぺんで

自分ののこと わしという ワシの

傷ついた足を治療していた

ブリッチャがモゴモゴ言ってから

自分のことを わしという ワシの 傷ついた足に

フッと息を吹きかけると 傷はもとどおりに治ってしまった

ふと遠くに目をやると いくつも重なった山の向こうに

きれいな虹がかかっていた

ブリッチャは その虹の美しさに見とれていた

いつかあの虹を歩いてわたってみたいと

ずっと前から思っていた

自分のこと わしという ワシの話だと

虹の出ている方向には 都会というところがあるらしいと言う

あの美しい虹がかかる都会というところは

きっと素晴らしいところだろう

ブリッチャは輝く虹を 歩いてわたるために

都会に行ってみようと思った

ブリッチャの出発の日がやってきた

森の仲間たちがたくさん集まってきて

ひだまりの歌をうたって見送ってくれた

自分のことを わしという ワシの背中にのって

ブリッチャは みんなに手をふった

自分のことを ワシという ワシがバタバタと羽ばたくと

ブリッチャは あっという間に大空高く舞い上がった

神秘の谷がみるみる小さくなっていった

いくつもの山をこえ 谷をわたる

自分のこと わしという ワシは

風の道を知っていて

風の道の歌をうたいながら

風の道にのってスイスイととんでいく

川のはばが だんだん広くなってくると

いろいろな建物がみえてきて

黒い道のうえを 四角い箱が走っていた

見るものすべてがはじめてで

ブリッチャが夢中になって下界を見ていると

とつぜん頭の上を ゴーとすごい音を立てて

大きな おおきなはばたかない鳥が飛んでいった

もうそろそろかな

風の道がなくなったので

もうこれ以上飛べないと言って自分のことを わしという ワシは

大きな高い四角い建物がの上におりた

ブリッチャは 自分のことを わしという ワシに

かならず虹を見つけて

都会から 神秘の谷まで

虹をわたって帰ることを約束した

人間をみるのは初めてではなかったけど

コンクリートの山のくぼみの中や

谷の道を歩く 人間の多さに

ブリッチャはおどろいた

さて さて 虹はどこにあるのでしょう

ブリッチャは小さな公園の 大きな桜の木に聞いてみた

「虹のことは よくわからないけど 都会は今大変なんだよ」

と大きな桜の木が話し出した

「コンクリートやアスファルトでおおいつくされてしまい

熱がたまってあつくなってる

ヒートアイランド現象というらしいが なんとかしてくれないか

このままだと 夏に生き物はみなひっくり返ってしまうし

いっぺんに たくさんの雨がふって大変なことになる」

ブリッチャは人間が寝静まるのをまった

あたたまったツンとした風が吹いていた

ブリッチャがモゴモゴ言ってから

フッーと息をはくと

いらないアスファルトやコンクリートが消えて

そこからニョキニョキと木がはえてきた

都会のあちらこちらで ニョキニョキ ニョキニョキ

ビルにはスルスルと緑のつたがはっていく

ニョキニョキ スルスル

一瞬にして都会は緑でおおわれた

大きな桜の木は おおよろこびで

「何もあげられるものは ないけど

わたしの葉っぱのみどりをあげよう」

ブリッチャは葉っぱの みどり色を手に入れた

「虹のことなら海に行けばわかるかもしれない」

大きな桜の木は そうおしえてくれた

ブリッチャは初めて海を見た

暮れていく海をボーッと見ていたら

いつの間にか あたらいはすっかり暗くなっていた

波のすきまからゴツゴツと何かが ぶつかる音が聞こえる

ゴツゴツと音のする方にいってみると

大きな桜の木はウミガメが砂浜を 一生懸命 登ろうとしていた

話を聞いてみると

ウミガメは卵を産むために 砂浜にあがってきたと言う

でも 砂浜の上にちらばったゴミのせいで

思うように前に進めないで こまっていた

海には たくさんのゴミがただよっていて

波に打ち寄せられて砂浜がゴミでいっぱいになる

ブリッチャがモゴモゴ言ってから

フッーと息をはくと

浜辺じゅうにたまっていたゴミがきえて

軽くなった砂粒が サラサラと サラサラとうれしそうに

浜辺の歌をうたいだした

浜辺は月の光に照らされて 白く美く輝いた

ウミガメはおおよろこびで

「何もあげられるものは ないけど

この海のあい色をあげよう」

ブリッチャは 海のあい色を手に入れた

それから何日かすると

小さな 小さな 赤ちゃんウミガメがたくさん生まれて

きれいになった砂浜をサラサラとすすみ

海にはいって元気におよぎだした

「虹のことならそらに聞けばわかるかもしれない」

ウミガメはそうおしえてくれた

空に虹の話を聞くために

ブリッチャは都会で 一番高いビルのてっぺんに登った

さて さて 虹はどこにあるでしょう

ブリッチャは 空に聞いてみた

「虹のことは よくわからないけど

地球は今大変なんだよ」と広い空が話し出した

「空の高いところには オゾン層が地球をつつんでいて

太陽の紫外線が地上でいたずらをしないように

ふせいでいてくれるんだ

ところが 人間がべんりのために作り出した

いろいろなガスが この大切なオゾン層をこわしているんだ

このままだと 地上にとどく紫外線のせいで

人間の病気がふえたり 食べ物や魚が少なくなるんだ」

広い空はすっかりこまっていた

ブリッチャがモゴモゴ言ってから

フッーと息をはくと

空気中にただよう いたずらなガスが消えて

元気になったオゾン層が シュルシュルとうれしそうに

青空の歌をうたいだした

広い空はおおよろこびで

「何もあげられるものは ないけど この空の青をあげよう」

ブリッチャは空の 青色を手に入れた

「虹のことなら赤トンボに聞けばわかるかもしれない」

広い空はそうおしえてくれた

ブリッチャの住んでいた神秘の谷にも 赤トンボはいた

そういえば 赤トンボたちは 夏を山で過ごす

そのころは まだ体は赤くない

秋になると都会に行くのだと言っていた

ブリッチャが すっかり体が赤くなった

赤トンボを見つけたのは

小学校の校庭だった

さて さて 虹はどこにあるのでしょう

ブリッチャは赤トンボに聞いてみた

「虹のことはよくわからないけど

こまったことがあるんだよ」赤トンボが話し出した

「昔はたくさんあった池や川が

少なくなって しかも汚れてしまって

たまごを産む場所がなくなってしまった

だからしかたなく 夏が終わって使われていない

小学校のプールにたまごを産みにきたんだよ

でも せっかく生まれたヤゴたちも

プールそうじのときに 死んでしまうんだ」

赤トンボは悲しそうに そう話した

ブリッチャがモゴモゴ言ってから

フッーと息をはくと

小学校の校庭や 都会のあちらこちらで

ボコボコ ゴボゴボ ボコボコ ゴボゴボ

いろいろな大きさやかたちの みどりの草に囲まれた池が

ボコボコ ゴボゴボ できあがった

赤トンボは おおよろこびで

仲間たちと アカネ色の歌をうたった

「何もあげられるものは ないけど

赤とんぼの赤をあげよう」

ブリッチャは赤トンボの赤を 手に入れた

「虹のことなら星に聞けばわかるかもしれない」

赤トンボはそうおしえてくれた

ブリッチャは 星とはなすために

都会の真ん中で 一番高いタワーのてっぺんにいた

夜になっても ほとんど星が見えない

ブリッチャの暮らす神秘の谷では

夜になると 空じゅう星でおおわれる

さて さて 虹はどこにあるのでしょう

ブリッチャはやっと見つけたの星に聞いてみた

「虹のことは よくわからないけど こまったことがあるんだよ」

その星は うしかい座にあるオレンジ色の明るい星で

名前は アルクツールスといって

ギリシャ語で くまの番人と言う意味だという

アルクツールスがいうには

「街灯やネオンで都会の夜が明るすぎて 星たちが輝けない

昔の人たちは 星ととても仲良しだったのに

それに エネルギーをたくさん使うと

地球温暖化の原因にもなるから なんとかしなければいけない」

と言う

ブリッチャもその通りだと思った

ブリッチャがモゴモゴ言ってから

フッーと息をはくと

都会のあちらこちらで いらない電気が

パチパチと消えた

パチパチ パチパチ

消えていくと同時に

いままで見えなかった星たちが どんどんすがたをあらわして

キラキラ キラキラ うれしそうに輝きだした

パチパチ どんどん キラキラ

パチパチ どんどん キラキラ

星たちは おおよろこびで 星空の歌をうたった

見上げる空にゆったりと天の川が流れていた

「何もあげられるものは ないけど

アルクツールスのオレンジ色をあげよう」

ブリッチャはアルクツールス星の オレンジ色を手に入れた

「虹のことなら なの花に聞けばわかるかもしれない」

アルクツールスはそうおしえてくれた

ブリッチャは 大きな川の流れに沿った堤防にやってきた

そこに行けば うららかな春の光をあびて

なの花や たくさんの草花が 楽しく咲いていると聞いていた

ブリッチャは 堤防にやってきて おどろいた

堤防のまわりには こわれたテレビや冷蔵庫

古タイヤに家具 人間が使っていらなくなったものが

いっぱいすてられていた

すてられたゴミのすきまから

なの花やすみれの花が 悲しそうに顔を出していた

ブリッチャが なの花とすみれの花に聞いてみると

「だれか一人が捨てると どんどんみんなが捨てにきて

いつのまにか こんなゴミの山になってしまった」と言う

「昔は なの花や すみれの花で一面美しい堤防のだったのに

なかまは みんなゴミに押しつぶされてしまった」

ブリッチャは なんとかしなければと思った

でも ブリッチャは 今までたくさんの力を使ってしまい

自分にはもうあまり力が 残っていないことに 気がついていた

なの花や すみれの花はブリッチャに たすけてほしいとたのんだ

うなずいたブリッチャが 最後の力をうりしぼって

モゴモゴ言ってから

フッーと息をはくと

ゴミの山が消えて

なの花や すみれが堤防じゅうで

グングンのびて パッパと花を咲かせた

グングン パッパ グングン パッパ

あっというまに 堤防は みわたすかぎり

なの花とすみれや たくさんの花たちにいろどられた

花たちは おおよろこびで

「何もあげられるものは ないけど

なの花の黄と すみれの紫をあげよう」

ブリッチャは なの花の黄色と すみれの花の紫色を手に入れた

黄色と紫色を手にいれたとき

ブリッチャは すべての力を

つかいはたしてしまった

とつぜん ブリッチャのからだが

ゴウゴウと光につつまれると

葉っぱの緑色

海のあい色

空の青色

赤トンボの赤色

星のオレンジ色

なの花の黄色

すみれの紫色

が すべてドキドキ輝きだした

その輝きがやがて 七色の光のおびになって

都会から神秘谷にむかって走り

おおきな虹の架け橋になった

小さな公園の 大きな桜の木も

海を泳ぐ ウミガメも

虹のかかる 青空も

赤トンボもヤゴたちも

はるかかなたの 星たちも

堤防の 花たちも

こんなに美しい虹は いままで見たことがなかった

自分のことを わしという ワシも

神秘の谷の仲間たちも

輝く七色の虹を見上げながら

都会の仲間たちと一緒に

虹になったブリッチャのうたを

いつまでも いつまでも うたっていた

Date:2010.08.04 | 22:48 | コメントは受け付けていません。
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